No.16|試用期間中の社員を14日以内なら自由に辞めさせられる?解雇予告の例外ルールを正しく理解する

2026.11.01

「14日以内なら自由に辞めさせられる」は誤解です

試用期間中の社員について、「14日以内であれば解雇予告なしで辞めさせられる」という話を耳にすることがあります。これは労働基準法の条文を誤って理解したもので、実際にはそのような制度にはなっていません。

この誤解が生まれる背景には、労働基準法第21条の「解雇予告が不要になる場合」の規定があります。ただ、この条文の意味を正確に読み解くと、多くの方が想像しているような内容とは異なることが分かります。

今回は、試用期間中の解雇と14日という数字の関係について、条文に沿って整理していきます。

労働基準法第21条が定めていること

労働基準法では、使用者が労働者を解雇する際には原則として30日前に予告をするか、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があると定めています。

ただし第21条で、この解雇予告が不要になる例外が定められており、その中に「試の使用期間中の者」という項目があります(労働基準法第21条第4号)。この規定には但し書きがあり、「14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、この限りでない」とされています。

この条文を見て「試用期間中であれば14日以内は自由に解雇できる」と解釈してしまうケースがあるのですが、これは条文の意味を取り違えています。

この条文が意味しているのは「解雇予告の手続きが不要」というだけ

この規定は、「試用期間の最初の14日間は、解雇予告なしで(つまり即日で)解雇できる」という手続き上の例外を定めたものです。

重要なのは、これは「解雇予告という手続きが不要」という話であって、「どんな理由でも自由に解雇できる」という意味ではないという点です。

解雇そのものが有効かどうかは、別の問題として判断されます。労働契約法第16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。

つまり、たとえ14日以内であっても、解雇に合理的な理由がなければ無効になる可能性があるということです。

試用期間の法的な位置づけ

試用期間は、一般的に「本採用の前に適性を見極める期間」として設けられています。

裁判所の判断では、試用期間中の労働者であっても、すでに労働契約は成立しており、会社側が一方的に自由に辞めさせられる関係ではないとされています。試用期間満了時の本採用拒否や、試用期間中の解雇についても、通常の解雇よりは広い範囲で認められるものの、やはり合理的な理由が必要だという整理になります。

具体的には、以下のようなケースで試用期間中の解雇が認められやすいとされています。

  • 採用時に申告していた経歴や資格に虚偽があった

  • 業務に必要な基礎的能力が著しく欠けていることが判明した

  • 協調性に問題があり、指導しても改善が見られない

  • 無断欠勤や遅刻が繰り返され、勤務態度に重大な問題がある

それでも、会社側には「指導をしたか」「改善の機会を与えたか」といった点が問われることになります。

14日を過ぎたらどうなるのか

試用期間開始日から14日を超えて引き続き使用された場合、試用期間中であっても通常の解雇と同じく、30日前の予告か解雇予告手当の支払いが必要になります。この14日には休日も含まれ、暦日で数えます。

この場合も、解雇そのものが有効かどうかは、合理的な理由があるかで判断されます。14日を過ぎたから解雇できなくなるわけではなく、手続きとして予告期間が必要になるという違いです。

実務上の注意点

試用期間中の解雇を考える際には、以下の点を確認しておくと安心です。

具体的な事実の記録を残す
勤務態度や能力に問題があると判断する場合、いつ・どのような問題があったのかを記録しておくことが重要です。口頭での注意だけでなく、文書での指導記録があると、合理的な理由を説明しやすくなります。

改善の機会を設ける
一度や二度の失敗で即座に解雇という判断は、合理性を欠くとされる可能性があります。注意・指導をした上で、改善の機会を与えたという経緯があると、解雇の妥当性が認められやすくなります。

就業規則の確認
試用期間の長さや、本採用拒否の要件を就業規則に定めている場合は、その内容に沿った運用が求められます。就業規則に記載されている手続きを飛ばすと、後から問題になることがあります。

14日という数字に頼らない
「14日以内だから大丈夫」という認識で進めると、後でトラブルになるリスクがあります。この数字はあくまで解雇予告の手続き上の例外であって、解雇の自由度とは関係がないという理解が大切です。

まとめ:手続きの例外と、解雇の有効性は別の話

試用期間の最初の14日間に解雇予告なしで解雇できるというのは、あくまで「30日前予告が不要」という手続き上の特例です。どんな理由でも自由に辞めさせられるという意味ではありません。

試用期間中であっても、解雇には合理的な理由が求められます。具体的な事実に基づいた判断と、適切な指導・記録の積み重ねが、後のトラブルを避けるためには重要です。

採用してすぐに「合わない」と感じることは実際にあり得ますが、その場合でも慎重な対応が必要だという点は、押さえておいていただければと思います。何かのご参考になれば幸いです。


【参考】
労働基準法
労働契約法
厚生労働省「労働基準法の基礎知識」