No.17|私傷病休職の期間は何か月に設定すればいい?判断のポイントと実務上の注意点

2026.11.01

私傷病休職制度、期間設定で迷っていませんか?

就業規則に私傷病休職の制度を盛り込むとき、「休職期間は何か月にすればいいのか」と悩まれる方は少なくありません。法律で明確な基準が示されているわけではないため、どこを目安にすればよいのか分かりにくい部分があります。

本記事では、私傷病休職の期間設定について、判断の考え方と実務上押さえておきたいポイントをご紹介します。

そもそも私傷病休職の期間に法律上の定めはない

最初にお伝えしておきたいのは、私傷病休職の期間について、労働基準法などで「○か月以上にしなければならない」といった決まりはないということです。

休職制度そのものが法律上の義務ではなく、会社が任意で設ける仕組みです。そのため、期間の長さも会社が自由に決めることができます。極端な話、1か月でも3年でも、法律上は問題ありません。

ただし、「自由に決められる」からといって何も考えずに設定してしまうと、後々トラブルの種になることがあります。

一般的な休職期間の設定パターン

実際にどのくらいの期間が設定されているかというと、会社の規模や業種によって幅がありますが、おおむね以下のようなパターンが見られます。

  • 3か月程度:比較的短めの設定

  • 6か月程度:中小企業で多く見られる設定

  • 1年程度:ある程度規模のある企業や、長期雇用を前提とした企業で見られる設定

  • 勤続年数に応じて変動する設定

どれが正解というわけではありませんが、期間を決めるにあたっては、いくつかの視点で考えておくと判断しやすくなります。

期間設定で考えておきたいポイント

1. 健康保険の傷病手当金との関係

私傷病で働けない期間について、健康保険に加入している従業員であれば、傷病手当金という給付を受けられる可能性があります。この傷病手当金は、支給開始日から通算して1年6か月分(実際に支給された日数を積み上げて)まで受給できる仕組みになっています。途中で復職した期間は支給期間にカウントされません。

休職期間を設定する際、この1年6か月という期間を一つの参考にする考え方もあります。「経済的な支えがある期間内で復職の見通しを立てる」という整理です。

ただし、傷病手当金は「連続する3日間の待期期間を経て、4日目以降の休業日が支給対象」など、いくつかの要件があるため、すべてのケースで受給できるわけではありません。また、1年6か月という期間が長すぎると感じる場合は、もっと短く設定しても構いません。

2. 会社の規模と人員体制

従業員が数名の会社と、数十名の会社とでは、一人が長期間休んだ場合の影響の大きさが異なります。

小規模な事業所では、一人の欠員を長期間カバーし続けることが難しい場合もあります。そうした実情を踏まえて、休職期間を短めに設定することも合理的な判断だと思います。

逆に、ある程度の規模があり、業務の引き継ぎや代替要員の確保がしやすい環境であれば、長めの期間を設定する余地もあるでしょう。

3. 勤続年数に応じた段階設定という考え方

入社して間もない従業員と、長く勤めてくれている従業員とで、休職期間に差を設けるという方法もあります。

例えば、「勤続1年未満は3か月、1年以上3年未満は6か月、3年以上は1年」といった具合です。これにより、長く働いてくれた方への配慮を制度上示すことができます。

こうした段階設定を採用する場合は、就業規則に明確に記載しておくことが大切です。

4. 復職の可否を判断できる期間かどうか

休職期間を設定する際には、「その期間内に、復職できるかどうかの見通しが立つか」という視点も重要です。

あまりに短い期間だと、医師の診断や治療経過を見極める前に期限が来てしまうことがあります。反対に、長すぎると復職の見込みが立たないまま時間だけが過ぎてしまい、本人にとっても会社にとっても望ましくない状況になりかねません。

病状や治療内容にもよりますが、3か月から6か月程度あれば、医師の診断や治療経過をもとに復職の見通しをある程度判断できる場合が多いと思われます。

5. 社会保険料の負担に関して

休職期間中は、給与は発生しないことが一般的ですが、社会保険料の負担は継続します。そのため、休職期間中の社会保険料を給与から控除できなくなるため、一旦会社が全額を立て替え、後から労働者に請求することになります。この辺りも、事前に就業規則等に取り決めをしておくと、スムーズになるかと思います。

就業規則への記載と運用上の注意点

就業規則に明記する

休職期間を決めたら、就業規則に明確に記載する必要があります。記載する際には、以下の点を含めておくと安心です。

  • 休職を命じる事由(私傷病で○日以上欠勤した場合、など)

  • 休職期間の長さ(勤続年数による違いがあれば、その内容も)

  • 休職期間中の賃金の扱い(無給とする場合はその旨を明記)

  • 休職期間満了時の扱い(自然退職とする、解雇とする、など)

期間延長の扱いをどうするか

休職期間満了が近づいたときに、「あと少しで復職できそう」という状況になることもあります。その場合、期間を延長するかどうかの判断が必要になります。

延長を認める場合は、「会社が必要と認めた場合に限り、○か月を限度に延長することがある」といった規定を設けておくと、柔軟な対応がしやすくなります。ただし、延長を認めるかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

復職の可否は医師の診断書をもとに判断する

休職期間満了時に復職できるかどうかを判断する際は、主治医の診断書を提出してもらい、その内容をもとに検討することになります。

診断書には「就労可能」と書かれていても、実際に従前の業務を支障なく行えるかどうかは別の問題です。必要に応じて産業医の意見を聞いたり、試し出勤(リハビリ出勤)の制度を設けたりすることも検討してよいかもしれません。

一度決めた期間は途中で変えにくい

ここで一点、気をつけておきたいことがあります。

いったん就業規則で定めた休職期間を短縮する変更は、労働契約法上の不利益変更にあたり、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が認められない限り、従業員の同意なく一方的に行うことはできません。

例えば、「これまで6か月だったが、経営状況が厳しいので3か月に短縮したい」という変更は、既に働いている従業員にとって不利益な変更となります。こうした変更を行うには、原則として従業員個々の同意が必要です。同意が得られない場合でも、変更の合理性が認められ、かつ従業員への周知がなされれば有効となることがありますが、判断は慎重に行う必要があります。

反対に、期間を長くする変更(3か月→6か月)は、従業員にとって有利な変更なので、比較的スムーズに行えます。

ですから、最初に設定する際には、「後で短くするのは難しい」ということを念頭に置いて、慎重に決めておくと安心です。

これは、休職期間に限ったことではありません。

就業規則に定める内容すべてに該当します。一度定めた就業規則の内容に関して、労働者にとって不利益となる変更はハードルが高いという認識を持っておいたほうが良いです。

まとめ:自社の実情に合った期間設定を

私傷病休職の期間設定に「正解」はありません。会社の規模、業種、人員体制、経営方針などを踏まえて、自社に合った期間を決めることになります。

判断に迷う場合は、以下の点を確認してみてください。

  • 傷病手当金の給付期間(1年6か月)を参考にするか

  • 会社の規模や業務への影響を考えて、現実的に対応できる期間はどのくらいか

  • 勤続年数に応じた段階設定を取り入れるか

  • 復職の可否を判断するために必要な期間として、3〜6か月程度が妥当か

もし既に休職制度がある場合は、実際の運用状況を振り返ってみるのもよいでしょう。「期間が短すぎて困った」「長すぎて対応に迷った」といった経験があれば、それを踏まえて見直すこともできます。

何かのご参考になれば幸いです。