No.18|就業規則の周知義務とは?社員がいつでも見られる状態にする方法
就業規則は作るだけでは不十分です
就業規則を作成して労働基準監督署に届け出たら、それで完了と思われがちですが、実はもう一つ重要な義務があります。それが「周知義務」です。
労働基準法では、就業規則を「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付すること、その他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」と定めています。
つまり、せっかく作った就業規則も、社員が実際に見られる状態になっていなければ、法令上の要件を満たしていないことになります。
周知義務を果たしていないとどうなるのか
周知されていない就業規則には、重大なリスクがあります。
就業規則の効力が認められない可能性
裁判例では、周知されていない就業規則に基づく解雇や懲戒処分が無効とされたケースがあります。フジ興産事件(最高裁平成15年10月10日)では、就業規則が周知されていなかったために、その規定に基づく措置が効力を持たないと判断されました。
つまり、就業規則に「遅刻3回で減給」と書いてあっても、その規則を社員が見られる状態になっていなければ、いざというときに根拠として使えないということです。
法令で認められている周知方法
労働基準法では、以下のいずれかの方法で周知することが求められています。
1. 常時見やすい場所への掲示・備え付け
社内の休憩室や事務所など、社員が日常的に立ち寄る場所に就業規則を掲示したり、ファイルにして備え付けたりする方法です。
ただし「見やすい場所」というのがポイントで、社長室の中だけに置いてあるとか、施錠されたキャビネットの中にしまってあるといった状態では、周知したことになりません。
2. 書面の交付
就業規則を書面で交付する方法です。入社時に全員に配布する、または希望者がいつでも交付を受けられる体制を整える必要があります。
3. 電磁的方法による提供
社内のネットワーク上に就業規則のデータを置いて、いつでも閲覧できるようにする方法です。最近はこの方法を取る会社が増えています。
社内の共有フォルダに置く、社内イントラネットに掲載する、クラウドストレージで共有するなど、方法はいくつかあります。
ただし、社員全員がアクセスできる環境を整える必要があります。パソコンを持たない現場作業員がいる場合は、別の方法も併用するか、いつでも見られるタブレット端末を設置するといった工夫が必要になります。
実務上で間違いやすいポイント
パスワードで保護されたファイルは周知にならない
共有フォルダに置いてあっても、パスワードがかかっていて人事担当者しか開けない状態では、周知したことになりません。社員が自由に閲覧できる状態にしておく必要があります。
古いバージョンが掲示されたまま
就業規則を改定したのに、掲示してあるのは旧版のままというケースもあります。改定したら必ず最新版に差し替える運用を決めておくと安心です。ルールの管理は使用者としての重要な役割です。
事業所ごとに周知が必要
複数の事業所がある場合、本社だけに置いてあっても、他の事業所では周知したことになりません。「常時各作業場」とあるように、それぞれの場所で見られる状態にする必要があります。
今すぐ確認しておきたいこと
自社の就業規則について、以下の点を確認してみてください。
社員が「今すぐ見たい」と思ったときに、実際に見られる状態になっているか
新入社員も、入社後すぐにどこを見れば就業規則があるか分かるようになっているか
就業規則を改定した場合、確実に最新版に差し替える仕組みがあるか
すべての事業所で同じように閲覧できる状態になっているか
周知の方法に正解は一つではありません。紙での掲示、ファイルでの備え付け、電子データでの共有など、複数の方法を組み合わせても構いません。自社の実態に合った、無理なく続けられる方法を選ぶことが大切です。
すでにきちんと周知されている場合でも、社員が実際にアクセスしやすいかどうか、一度確認れることをお勧めいたします。



